vol5.生産管理システム導入の成果:その他

前々回は、生産管理システムの導入の指標として人時生産性の切り口から説明し、前回は在庫の切り口から説明したが、 今回はそれ以外の成果を見ていこう。

(1)リードタイム
リードタイムの捉え方としては製造部門だけに着目して着手~完成の「製造リードタイム」として見る場合や、 外注リードタイム、調達リードタイムの概念もあるが、生産管理システム全体の導入の成果という意味では、 「受注~出荷」または「受注~納入」のリードタイムを評価の指標としてとらえるのが適切だろう。
ただし、場合によっては「製造リードタイム」を評価の指標とするべきケースもある。
リードタイムを短縮するということは、製品、仕掛品、部品の在庫を減らすということである。
また、お客様の満足度向上にもつながる。あるいはこれに付随して「納期遵守率」を指標としてもよい。
ただし、製造部門以外も加味したリードタイムは、全体的な評価をするには適しているが、 毎日チェックして細かくマネジメントしていくようなものではない。
逆に製造リードタイムは、これをマネジメントの主要指標としようと決めたならば、
ある程度細かくチェックし、こまめに改善していくべきものである。
リードタイムを管理できることは生産管理システムの要件に入ってくることがほとんどだと思うが、 「どこからどこまでのリードタイムをつかむべきか」はよく考えておかなければならない。

(2)原価率
総合的な原価率については、言うまでもなく生産管理システムの評価指標となりうる。
ただし、総合的な原価率を見るだけでは原価低減のマネジメントは難しく、 いろいろな集計単位から原価を見えるようにしなければならない。
もちろん、直接的に原価を見ての管理ではなくても、以前書いた人時生産性の管理によって原価を低減したり、 製造リードタイムの管理によって原価を低減することもできるが、ここでは「原価を見て原価を低減する」ことを考える。
例として以下のようなケースが考えられる。
「この製品群はロット毎のバラつきが大きいようだ」→「バラつきをなくして原価を下げよう」
「そもそもこの特注品は売価が安すぎたのでは」→「この製品群の見積ルールを見直して原価率を下げよう」
「閑散期でもあまり外注費が減っていない」→「内製/外注の判断ルールを見直そう」
つまり、上記のような判断材料の数字を抽出できなければならない。
もちろん生産管理システムの外側で集計しても構わないが、ロット別となると生産管理システムがないと厳しい場合が多い。

(3)納期回答平均時間
「○○を△△個ほしいんだけど、いつまでにできる?」
このお客様からの問いに、製造リードタイム、在庫状況、生産計画の混み具合などの根拠を持って答えるには時間を要する。
生産管理システムがしっかりと活用されていないと、スムーズに回答できない。
利益には直結しない数字なので、経営的にはあまり興味のないものかもしれないが、 生産管理システムの総合的な活用度をみるにはいい数字である。
ただし、ここまでに挙げた指標は生産管理システムを入れる前の過去データを割と容易に掘り起こせるが、 納期回答平均時間は集計しておかないと出てこない。
もし、これから生産管理システムを入れる、刷新するということであれば、今のうちにデータをとっておいていただきたい。

(4)設備総合効率
設備を効率的に稼働できたかどうかを総合的に表す指標。
式で書くと、
 時間稼働率×性能稼働率×良品率
となる。
総合的な評価指標としてはよいのだが、以下の理由からあまり推奨しない。
・生産管理システムにPOP(Point of Production)の概念が入っていないと集計は難しい。
・当然、人の作業主体の工場では使われない。
・段取り時間が長すぎたり、不良が多すぎたりなど、工場の管理レベルが低いとあまり意味をなさない。
・不良を出した際は、手戻り再作業で良品に修正するのではなく、廃棄が半ば前提の指標である。

ここに挙げたものが全てではないが、総合的に生産管理システムの導入の成果を評価するにはこのあたりだろう。
これから生産管理システムを導入、刷新しようとする方だけでなく、導入したばかりの方も、 どのような方向(目的)で成果を出していくべきかよりはっきり見えてきたら幸いである。

次回は、以前少し触れたが、成果を出すために必要な「PDCAサイクル」を解説しよう。

(2014年8月8日)

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