vol4.生産管理システム導入の成果:在庫

前回は、生産管理システムの導入の指標として人的生産性について書いたが、 今回は在庫に関する成果を見ていこう。

成果を測定する指標として第一には「在庫回転率」である。
在庫回転率とは「いかに効率的な在庫量で売上をつくれているか」を表している。
在庫回転率は、○回転/年、○回転/月、あるいは○ヶ月分、○日分などと表す。
いずれも売上と在庫量との比率で、どっちを分母に持ってくるかの違いだが、自社の管理がやりやすい指標を取ればよい。
ただし、会社全体や製品群など総合的な在庫回転率を見るのであれば、金額に着目して「在庫金額 ÷ ある期間の売上高」となるが、 細かく管理する分には、数量に着目して「在庫数量÷ある期間の販売・消費数量」とするのが一般的だ。

ここでの主旨は、生産管理システムの導入成果を想定しているので、前者の「金額に着目」となるだろう。
だが、発注点管理などは後者の「数量に着目」となる。

販売量、消費量が同じであれば、在庫数量が少ないほど、効率が良いということになる。
ただし、当然ながら在庫数量が少ないほど、欠品リスク、販売チャンスロスが増えることとなる。
新入社員などの方々からは
「だったら、たくさん在庫を持って、チャンスロスを減らした方がいいでしょう?」
という話も出てくるかもしれない。

では、なるべく在庫を少なくすることはどのような意味があるのだろうか。
まず、現場的な視点からは、在庫を少なくすると
・古い在庫を保持する必要がなくなり、劣化による不良在庫化リスクが低減される
 (生鮮食品を想像するとわかりやすいが、たくさん在庫していても、古いものはすぐに悪くなり、売り物ではなくなってしまう)
・在庫が少ないということは、棚卸がしやすい
・省スペース化できる
とも言えるだろう。

経営的・財務的な視点からは
・必要運転資金を圧縮できる
・在庫を圧縮してできた資金を他に回せる、借入を減らすことができる
というような意義がある。
例えば、月商1億円。在庫回転率が1か月分 → 0.5か月分に向上したとすると、 資金に5000万円の余裕ができる。これは大きい。
さらに言えば、在庫を減らすと会社が「強く」なる。
なぜならば、在庫がムダに多いと、いろいろな問題が隠れてしまうが、在庫が少なければ問題が顕在化され、解決せざるをえなくなる。
例えば、不良率の高さ。ある工程でたくさん不良が作られても、次工程では「良品の仕掛品がいっぱいあるからいいや」のようなことになってしまう。
あるいは、工程間でサイクルタイムが大きく差があり、次工程で5分に1個着手するところに前工程から10分に1個しか来なくても「仕掛品がいっぱいあるからいいや」と、 いつまで経ってもアンバランスな工程で生産しつづけることとなる。
これらのような問題が在庫を減らすことによって顕在化し、解決されていけば会社が強くなっていく。

さて、生産管理システム(在庫管理システム)を導入さえすれば在庫が減るというわけではない。
・発注・生産計画投入のルール(タイミング、発注量・生産量)を決め、それを確実に運用する。
・そして、定期的に消費データをもとにルールを見直していく
これによって、欠品しないギリギリの在庫回転率に近づけていくことができる。
つまり、在庫の面から成果を出していくためには、ここの部分をしっかりと運用できる生産管理システムを選択する必要がある。
総合的な評価(全体的な金額ベースの在庫回転率)は生産管理システムの外側でやっても構わないが、 個別の回転率はさすがに生産管理システムの支援が必要となる。

ただし、いきなり全在庫品について細かい発注管理をしようとしても無理が生じる。
在庫量の管理のインパクトの大きいもの (単価、鮮度の重要性、大きさ、改廃サイクルなどからあまり多くは在庫したくないが、欠品すると社内の後工程やお客様への影響が大きいもの) から管理をはじめ、モノによっては「在庫せずに必要になったら生産計画投入」「在庫品だけど空になったら発注」で十分間に合ってしまう。
あるいは、ネジなど単価が少額で、あまり在庫がかさ張らず、欠品すると大きな影響が出るものは、 以下のようなダブルピン方式でもよい。
「箱を2つ用意しておき、片方が空になったら1箱分発注する」
要するに
「発注点は高めの、アナログでシンプルな発注点管理」
ということだ。

このように、在庫管理は生産管理システムの外側での工夫の余地が大きい。

さて、在庫の切り口から見た生産管理システムの成果に戻ろう。
先ほど「まずは在庫回転率が評価の指標である」旨は述べたが、もう1つ、「欠品率」も必要だ。
なぜなら「在庫回転率は上がった。でも欠品率が大きく悪化した」では話にならないからだ。
ただし、よっぽど大きな工場でない限り、欠品率の管理は生産管理システムの外側で十分だ。
欠品した際に「何が何個欠品したのか。原因は何なのか」を記録しておけばよい。
また、欠品率はある程度の許容が必要である。
欠品が発生し、すぐに「次回から発注点を大きくとろう」というのはセオリーではあるが、杓子定規にやってはいけない。
最小発注単位や欠品したときの影響度合いによっては「また欠品してもいいので、発注点はそのまま」ということもある。

これらの在庫回転率と欠品率によって、在庫管理から見た生産管理システム導入の成果を評価することができる。

次回は、人時生産性、在庫以外の面から見た成果について見ていこう。 
(2014年8月1日)

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